プロ野球スカウトが教える 一流になる選手 消える選手 (祥伝社黄金文庫)
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プロ野球読売巨人軍の選手からコーチ・スカウトなどの経歴を過ごした著者による、スカウティング活動の様子や選手指導の実態について書かれた本。
プロ野球というのはある意味では特殊な世界ではあるのだが、一方では当然ながら多数の人間によって構成された組織社会であるという事が実例的に書かれている。
例えば、一軍にのし上がっていくためには練習が大事なのは当然だが、そこに目的意識がなければいくらやっても無意味であるとか、コーチが10人いれば云う事が十人十色になるのはある意味当然で、真逆の意見も存在する以上全部を無条件に受け入れるワケにはいかないが、自分の課題が分かっていれば質問の的が絞れるのでブレずに済む、というような話は、野球に限った話ではないだろう。
他にも、チームプレイを行う以上選手には協調性が求められるとか、二軍でくすぶる選手は自己過信に陥っている場合が多いが、他人の目からは不足している部分が見えているものなので、それに謙虚に耳を傾ける姿勢が大事であるなど、企業等の一般組織にも相通づる箴言を多く含んでおり、ビジネス書的な読み方も出来る本である。
とはいえ、アドバイスに耳を傾けずにくすぶる選手を見放す事が出来るのは、やはり独特な部分なのかも知れない。大企業はいざ知らず、中小企業の管理職は、部下が云う事も聞かず、さりとて自分で実績をあげる事も出来ない、使えない人間だからといっても放っておいて契約解除、というワケには簡単にはいかない。無論コーチの立場もいつまでも保証されているものではないし、選手を育てられなければ自身のクビが簡単に飛ぶというリスクを背負った商売であるのは事実である。実際この著者も一応選手は公平に扱ったそうだし、本書を読む限り選手個々の能力を見極めてそれに見合った指導を行うべく努力を払ったようではあるが、一人の育成に失敗しても代わりの人材に困らない、という環境は、一般企業よりは恵まれているかな、と思えてしまう。
そういう、多少僻む気持ちの籠った気に入らない箇所はあったものの、全体的には有名選手、或いは入団時のみ騒がれた記憶がある選手がほぼ実名で例示されているので、野球界の舞台裏に関心のある向きには楽しめる本だろう。もっともアンチ巨人に近い立場としては、もう少し巨人色の薄い中身にして欲しかったのだが、これはきっと少数意見に属するだろう。むしろ、巨人の内幕について書かれた本だから、という動機による購買層の方が遥かに多いに違いない。まぁ、アンチ巨人の気持ちより、プロ野球全体を楽しんで観てるクチなので、これもさほど強い不満ではないのだけれど。





あきゃさん 