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メイド喫茶で会いましょう



評価
著者 早川清
出版社 アールズ出版
読者 男性あきゃさん
読書日 2010年07月18日(日)
発売日 2008-08-21
書籍コード ASIN:4862040780 ISBN:9784862040787
値段 1,365円
形態 単行本(ソフトカバー) 13.0×18.8×1.6cm 全176ページ
タグ 処分 

 コメント

世の中の一部で根強い支持を集める‘メイド喫茶’について、ウォッチャー的立場の人や元経営者、それにメイド自身といった人がそれぞれに分析や解説を行った本。
実際に2度ほど行った事があるのだが、その度に拭い難い違和感を感じた人間としては、業態としてのコンセプトや常連になる客の求めるニーズのありか、それに実際に働く立場で抱くホンネの部分を知りたくて手に取った。

結論として読めて来たのは、‘メイド喫茶’という空間が、極めて限定された人々の渇望するファンタジーの世界であるという、至極当たり前なものだった。
女のコとふれ合いたい。だけど緊張して話す事が出来ない。かといって風俗みたいな生々しいモノを求めてるワケじゃない。キャバクラは結局は自分の席に付いた女のコを楽しませなきゃならないので敷居が高い。そんな気弱で受け身なタイプの男性にとって、向うから気軽に声を掛けて来てくれて、ちょっと甘ったるい気分に浸れて、マニアックな話にも付き合ってくれて、店の設定した軽い決まり事に従う事で連帯感のようなものを持つ事が出来、しかも極端に値段が高いワケでもないメイド喫茶は、そんなささやかともワガママとも云える欲求を過不足なく満たしてくれるのだ。
そしてそれはアニメの世界と同じで、非現実である事は了解しているけれど細部に亘る設定がその境界線を逆に曖昧にさせる効果を果たしているので、自分が‘ご主人さま’という立場で‘かわいいメイドさん’である女のコに優しく接してもらえる状況を仮想現実として客が受け入れやすくする役割を担っているのだ。
だから当然、他の客も‘ご主人さま’としてかしずかれている事など見ないふりするのがお約束になるし、メイドさんが標準を下回るようなルックスだったり多少老けていて衣装が似合っていなくてもそれを指摘するのは暗黙の了解として御法度になるし、メイドさんが供してくれる料理に「おいしくな〜れ!」と魔法をかけるのを一緒に楽しむ姿勢を共有出来なければ、浮き上がってしまうのは冷静な客の方になってしまうのである。
それゆえ、その店と客が共有するファンタジーの空間が維持出来なくなった時点で店は廃れてしまうので、飽きられた店はそこで終わりになってしまう。新たにオープンする店と同じくらい幕を下ろして一種伝説化した店が存在するのはそういう理由だ。
要するに、提供された仮想現実に入り込めなければむしろ居心地の悪い空間になる。そしてそこまで没入するためには、現実から逃避するくらいの勢いがなければ無理なのである。だから当然、メイド喫茶でノートPC開いて会議用の書類を作成する事など難しいし、得意先との打ち合わせなどもっての他、という事になる。

かたやメイドさんの方はと云えば、やはりアニメ趣味というマイノリティに属するタイプが多いようで、客との会話もかみ合いやすいという点では向いたコが職に就いているようである。その上可愛らしい(と思うかどうかは趣味の問題だが)服を着る事が出来、客からはチヤホヤしてもらえるので、給与が他業種と比べてやや低い水準であるにも拘らず、一定数の応募があるそうだ。
もっとも裏に回ると、尊大な‘ご主人様’がくれた背丈ほどもある大きなクマのぬいぐるみを、カッターを突き刺して中の綿を全部引き出すという凶行に及ぶメイドさんもいるらしい。勘違いする人間は接客業に於いては避けて通れない相手ではあるが、こうした現実はシビアを通り越して、空恐ろしいような部分を含んでいるようだ。

そうした実情が把握できた、という意味では読んで実りある本であったが、マジックのタネ同様、理解が済めばマニア以外の人間にとってはそこまでの本である。

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