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プシュケの涙 (メディアワークス文庫)



評価
著者 柴村仁
出版社 アスキーメディアワークス
読者 男性あきゃさん
読書日 2010年03月10日(水)
発売日 2010-02-25
書籍コード ASIN:4048683853 ISBN:9784048683852
値段 599円
形態 文庫 10.6×15.0×1.2cm 全296ページ
タグ 処分 

 コメント

夏休みに補習を受けていた男子高校生・榎戸川が、その授業中に同級生の女生徒・吉野が校舎から転落していくのを目撃し、その死について同学年の変人と呼ばれる男子生徒・由良に引き摺られるようにして真相を追っていく、という切り出しで始まる物語。

何というか、全てにおいて平凡な作品だった。
吉野の死の真相も、由良の変人っぷりも、生前の吉野が過ごした厳しさに満ちた生活環境も、全てどこかで読んだような話ばかりなのだ。
強いていうなら閉塞的な環境に対し自由を求める青春期の苦悩、のようなものは描かれてはいたが、それさえも格別目新しくはない。
伏線を敷いて後でどんでん返しがあったりするといった趣向は凝らしてある。登場人物も共感しにくいキャラではないし、文体もさらっとしていて読みやすい。よく出来ているかと問われれば、一応それなりにまとまっている作品だとは云えるのだが、それでも読後心に何も残らないのだ。

じゃあ本作は何がいけなかったのか?
それは結局、作品全体に漂うチープさ、だと思う。
ストーリーを編み出す技術は兼ね備えているものの、著者が本作で何を目指したのかが見えて来ない。単に過去に自分が読んで面白かった小説を適当に編集して、より合わせてみただけという印象を受ける。そうであるので、とりあえず腕試しに書いてみただけの、単なる習作のようにしか読めない。結果、丁寧な書き方をされている割に作品におけるリアル感は希薄なものになってしまっている。それが「仏つくって魂入れず」という感じの、安っぽい仕上がりに見えてしまう理由だと思う。

著者はこれまでライトノベルの分野で幾つかの作品を発表してきた人らしい。その出自自体を侮る気はない。有川浩のように、そこから大きく成長した作家もいるのだから。(もっとも、本書の帯で有川浩が本書を絶賛している点については、いくら宣伝目的という事情があるとはいえ、疑問符をつけずにはいられなかったが。)
だが今後、この著者が幅広い読者層を開拓していきたいと考えるなら、少なくともこんな小手先でちょちょいと書いたようないい加減な作品は出さない方がいいと思う。ライトノベルに満足するティーンエイジャーは騙せても、一般の本好きはその程度では納得しないものなのだ。

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