海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語 (現代の世界文学)
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コメント
8篇の寓話が収められた、ごく初期の短編集。
そこに見えている物語をつかもうとしても手ごたえがない。海や空や蜃気楼の非人間的な美しさに憧れて(心の一部では非常な退屈を覚えながら)ぼんやりと眺めるような読書。
雲の形、星の光、遠い国、砂丘、熱風についての巧みな表現があって、原文で詠みあげることができれば、もっと素敵なのだろう。しかし、この描写そのものがル・クレジオの作品の核だとおもった。
どこまで読んでも、人は皆なんとなくうわの空で、草の葉や月の輪郭のほうが余程くっきりとしていた。つらくて寂しいものばかり胸に溜まるのに、なまじ美しいから目が離せない。
さしずめ宮沢賢治のフランス版といった感じ。
あまりのやるせなさに読み終えて本を閉じた瞬間ずるずると眠ってしまう。そのまま長いこと目覚めなかった。
名言
彼らは言った、こうして毎年、痕跡を残さずに消え失せ、どうしても見つからない人が何万もいると。教師や学監たちは、肩をすくめながら、まるで世にもありふれたことだというようにこの短い文句を繰り返すのだったが、しかし僕らがそれを聞くと、それは僕らを夢見させ、僕らの奥底で秘かなそして呪縛するような夢を始動させて、その夢はまだ終っていない。(P.163 海を見たことがなかった少年)
マルタンは自分自身のことは話さなかったし、誰も彼に何であれ訊ねる気など起こさなかっただろう。結局のところ、彼はまるでずっと「ディーグ」にほかの人よりずいぶん前からいるかのようだったし、そればかりか、道路や鉄橋や飛行機の滑走路が建設されるずいぶん前からいるかのようだった。確かに彼は、ここの人たちが知らないことを知っていた。ずっと昔のことやとても美しいことを彼は自分の頭のなかに持ちつづけていて、それが彼の眼に光を輝かせるのだった。(P.186 アザラン)





まちとさん 