世界ニホン誤博覧会 (新潮文庫)
|
|
コメント
看板や食品パッケージなど、海外製品に記された‘間違った’日本語を取り上げ、その珍妙さ加減を楽しもう、という趣旨の本。
いわゆる宝島社刊行の「VOW」の誤植コーナーを特化したようなもの。
このテの本は基本的には大好きなのだが、本書に限って云えば頂けない点が3つもある。おかげで少し読み進めるだけでウンザリしてしまい、結果的に読了に1カ月もかかってしまった。
1つ目は、一般的な文庫で刊行されているため、投稿された写真の写りが悪く、ネタが見づらい事。投稿者の撮影の腕前が多少下手であってもグラビア印刷で救われるケースは多いが、モノクロ印刷で紙質も悪い文庫形態ではパッと見で面白い部分を見つけるのが難しくなる。
この欠点は予め認識されていたようで、わざわざネタ写真に被せるようにポイントとなる間違った文がそのままタイトルとして植字されているのだが、これを先に目に入れてしまうとネタを味わう上でむしろ興醒めになってしまい、フォローどころか却って邪魔に感じる。
2つ目は、著者のツッコミのつまらなさである。
お笑いに置き換えて考えると分かりやすいかと思うが、ボケ(投稿ネタ)の出来が安定しない場合、その局面を救済するのは的確でキレのあるツッコミである。タカ&トシの面白さがトシの絶妙なツッコミに負うところが多いのと同様、さほど面白くない投稿ネタであっても拾い方次第で十分笑えるモノに化けたりする。
だが悲しいかな、著者のツッコミセンスが凡庸なため、素材が素材以上のものには決して伸びる事がない。このテの書籍の本家である「VOW」においても、笑いのツボを心得た渡辺祐が監修した初期3作以後、クオリティがガタ落ちしたものだ。本書の著者についても広告代理店のコピーライターという、ある程度文筆で身を立ててきた経験があるとはいえ、所詮は素人芸の域を出ておらず、必死に書かれたテンション高めなコメントがむしろ痛々しくさえ映る。
この場合むしろ「タモリ倶楽部」におけるタモリのように、淡々としたスタンスでネタに向き合った方がその面白さが引き立つと思うのだが。(とはいえタモリのあのスタンスは、ある種熟練の技でもあるので、簡単にマネ出来るものではないかも知れないけれど。)
そして3つ目は、収集したネタをエセ学術的に考察しようとした点である。
こうしたネタ本はどの道イロモノとして楽しむ事にしか意義はなく、であるからこそ徹底的にイロモノ路線を突っ走った方がむしろ味わいが深くなるものなのだ。
しかし著者は一般書籍として売り出される事で変な色気でも出たのか、誤記のある食品会社にメールで事情を問い合わせたりしてみては相手から無視されている。こうなってしまうともうピエロのようで、著者に対して憐れみすら覚えて来る。
巻末で誤記が生じる生成過程についての分析なども試みているが、そんなものは実物のネタを見た瞬間に読み手は無意識のうちに想像し判断しているものであり、得意気に解説されてもひたすら蛇足でしかない。
寿司屋の話ではないが、主役はあくまでネタであり、提供者は黒子に徹するのが粋なのである。分をわきまえずしゃしゃり出て来るのは野暮というものだ。
まぁ、センスのない人には理解できない事かも知れないが。





あきゃさん 